人生ではじめてデパコスを買った話


今日人生ではじめてデパコスを買った

来週誕生日を迎える妹へのプレゼントのために




私には双子の姉と、3つ下の妹がいる

幼い頃の記憶は私と姉が遊んでいるところに突然赤ちゃんが入ってきたかんじ

私と姉はよく喧嘩をしていて、その隣で妹が誰よりも泣いていた



ずっと私と姉の真似をする子だった

ずっと私と姉と自分を比べては落ち込んだりしてる子だった

でも私は妹のことが可愛くてたまらなかった

それは妹が赤ちゃんの頃からそうだし、妹が22歳になってバリバリのオフィスレディになった今もそう

妹がコンプレックスに感じてる天パも、八重歯も、ものすごく可愛い




私だけ地方の大学に行き、姉は東京の大学、妹は姉と同じ東京の短大に行って姉と同じ家に暮らした

姉が外で遊んでばかりで家に全然帰ってこなくて寂しい、と妹はよく言ってて、私はあんなに可愛い妹を寂しくさせるな!と姉によく怒ってた

夏休みとか長期休みになると貯めていたバイト代を全部もって東京に行って妹といっぱい遊んだ

「姉はいつも割り勘だけど()はいつも奢ってくれるから好き」

って妹が言うからいっぱい奢ったしなんでも買ってあげた


私が着なくなった服を妹に着せたり、妹に似合いそうな服やアクセサリーを買ったり

可愛いと思うけど自分でやるには勇気が出ないようなメイクを妹にしたとき、化粧にまだ慣れていない妹は瞼をプルプルさせてマスカラに怯えてた




ある夜、妹と外で夕飯を食べてカラオケをした帰り道、

歩道橋の上からキラキラ光る街を見回した妹が「すごいきれい、すごいたのしい!今すごくたのしい、今日のこと絶対忘れない」と言ってた





大学を卒業したら私も東京で暮らす予定で就活をした

でも精神疾患を患ってしまったので就職を諦めた

家族には精神疾患を患ったことがバレたくなくて嘘をつき、東京でフリーターをやりたいということで上京し姉と妹が住む家で私も暮らすことになった





上京したばかりの頃は妹とそれまで通り楽しく過ごした

昼夜関係ない生活なので夜更かしした日は妹の朝食と弁当を作って、

化粧が苦手な妹に化粧をしてあげてから学校に見送った




でも私は無職だ

精神疾患があるからバイトもあんまりできない

妹にあんまり奢れなくなった

それが恥ずかしくて妹と出掛けなくなった



大学の同級生が仕事の話ばかりするようになったからSNSが見れなくなった

私は今日も明日も明後日も何も予定がない

妹は私がこんな人間だと思ってなかっただろう、真似したくなるしいつも奢ってくれるお姉ちゃんのはず

自分が恥ずかしくて情けなくなる毎日

部屋にこもって酒ばかり飲むようになった

妹は私に失望してるだろう、恥ずかしい姉だと思ってるだろう、そう思うと

部屋から出て妹に存在を感じ取られるのが怖くて部屋から出れなくなった

トイレにも行けず糞尿も部屋で済ませた

糞尿くさい部屋にこもって酒ばかり飲む姉なんか最悪だから死んだほうがいい

たまに外に出たい時は妹に「今家にいる?」とLINEして「いない」と返信が来るのを待った

私と妹のLINE履歴はそればかりで埋まっていた






時が経って妹の卒業式になった

母親と父親が東京まで出てきて卒業式に参加した

私は遠くの公園で朝からずっと酒を飲んでた





卒業した妹は地元に就職した

妹が家を出ていく日も私は部屋で酒を飲んで寝てた





あんなに仲良しだったのにすごく遠い存在になった

でも私は妹のこと全然嫌いになったわけじゃなかった、それどころかずっと大好きな世界一可愛い妹のまま

なのにあんなに酷いことをした、もう戻れないかな、戻れないよな、と考えていた





しばらくして私は酒の飲みすぎで体を壊して入院した



そのときに親に全部バレた

私が精神疾患を患ってて引きこもりになっていることも、妹のことが怖いことも




そして母が教えてくれた

「妹、()が避けてくるって言ってたよ、悲しいって。一緒に住んでるのに一人暮らしみたいで寂しいって。」


ものすごく後悔した

私は姉と同じことをしてる

私まで妹を寂しくさせた

妹は私ともっと一緒に遊びたかっただろう

家にいるときは私とおしゃべりでもしたかっただろう

また私のご飯を食べたかったかもしれない

妹は私のことを恥ずかしい姉だなんて言ったことなかった、私は妹のことを見ていなかった



これからは妹に優しくしよう、なんでも話そう、と思うようになった


でも緊張するし恥ずかしくてなかなかうまくできない

姉と妹は毎日のようにLINEで雑談をしてるみたいだけど、私は妹と何を話せばいいかわからない






去年の夏、家族で旅行に行った

妹に会うのは久しぶり、しかも今の私は酩酊していなくてシラフ、シラフで妹と向き合うのはすごく久しぶりで緊張した


最初は何を話せばいいかわからなかったけど、妹は今自分がハマってるメイクやコスメについてずっと語ってた

それを聞いてるのがすごく嬉しかった




母に「妹に謝りたい」と言ったら、「もう妹も気にしてないよ、これからまた仲良くしたらそれでいいよ」と言われた





それから妹と仲良くなったかといえばそうでもなくて、

LINEでやり取りはしないし、妹の近況も特に知らない


でもある日私のインスタに鍵垢からフォローがきた

誰だろうとフォロー申請をしたらすぐ通った、

見たら妹がコスメやネイルを載せるアカウントだった


それまで妹のツイッターやインスタを知らなかったから、すごく嬉しかった

また仲良くしよう と言われているようだった






今日人生ではじめてデパコスを買った


PARCOの1階のデパコス売り場でMACのハイライトを買った


販売員のお姉さんに「何かお探しですか?」ときかれて

「コスメが好きな妹の誕生日プレゼント探してるんですけど、どれがいいですかね?」とこたえた




久しぶりに妹とのLINEのトーク画面を開いて

「誕プレ送るけん住所おしえて」

と送ったら、住所と

「ありがとう」

のスタンプが返ってきた